本と映画とのんびりな日々。

大学3年生。読書と映画鑑賞が趣味。

ねっとりとした不気味な雰囲気  ウィンドアイ

 

 

 

まだまだ20度を超える日もありますが、

季節はもう秋ですね。

 

 

食欲の秋、勉強の秋、おしゃれの秋…。

秋は何かにとことん乗り込める季節です。

私は断然『読書の秋』です。

 

 

秋に限らず年がら年中、授業の合間もバイトの休憩時間も

ずーっと本を読んでいる私ですが、最近面白い本に出合いました。

読了後にいつも小説を読む時とは違った、

なんだかねっとりとした不気味な雰囲気に

 

自分が飲まれてしまうようなそんな感じのする短編集です。

 

 

 

その本がこちらです。

 

 

ウインドアイ (新潮クレスト・ブックス)

ウインドアイ (新潮クレスト・ブックス)

 

最愛の人を、目や耳を、記憶を、世界との結びつきを失い、戸惑い苦闘する人びとの姿。かすかな笑いののち、得体の知れない不安と恐怖が、読者の現実をも鮮やかに塗り替えていく――。滑稽でいて切実でもある、知覚と認識をめぐる25の物語。ジャンルを超えて現代アメリカ文学の最前線を更新する作家による、待望の第2短篇集。

 

目次

  1. ハッピーエンドでもバットエンドでもない
  2. 重くて暗い独特の世界観をもつ登場人物
  3. 読了後の不思議な感覚

 

 

 

1.ハッピーエンドでもバットエンドでもない

 

この本は25編の短編集なのですが、その中でも私が印象に残ったのは

最初の短編であり、この本の名前にもなっている『ウィンドアイ』です。

 

 

この物語の主人公は兄妹の兄です。

妹と一緒に新しい家を探検して遊んでいると、

外側からしか見えない窓があることに気づきます。

位置を確認し、家の中からその場所に言って探しても

そこに窓はないのです。

これが本の題名にもなっている『ウィンドアイ(風の目)』です。

そのウィンドアイに一番近い窓から妹が身を乗り出し

その存在を確かめようと触れたとき、

妹とウィンドアイが突然消えてしまいます。

 

兄は妹を探し、母親のもとへ行くと母親は

「妹なんて初めからいない」というのです。

ウィンドアイとともに妹まで、初めから何もなかったことになってしまったのです。

 

 

物語は、ここで終わってしまいます。

妹はどうなったのか?

そもそも妹は存在したのか?

ウィンドアイとはいったい何だったのか?

読み終わった後、様々な疑問で頭の中はいっぱいです。

 

ハッピーエンドでもバットエンドでもない

とても不思議な感覚でした。

 

 

 

2.重くて暗い独特の世界観をもつ登場人物

 

 

どの短編作品を読んでも、その独特な世界観にすぐに引き込まれます。

ウィンドアイのように、それぞれの作品には謎の多い存在が登場し

物語をどんどんダークサイドに引きずっていきます。

 

 

「二番目の少年」では、主人公の少年レピンに奇妙な話を

聞かせ続ける男ディアク。

「ダップルグリム」では、主人公の僕を惑わし、

言葉も発することなく目を見つめるだけで

大量殺人へと導く馬のダップルグリム。

 

それぞれの登場人物が、まるで体の奥に何か底なしの闇を

抱えているかのように物語を動かします。

 

 

 

3.読了後の不思議な感覚

 

どのお話も、ハッピーエンドでもバットエンドでもない

不思議な終わり方をしたり、そもそも話の導入部分だけで

終わっているようなものがあったりして読み終わった後は

とても不思議な感覚がします。

 

それと同時に、一つ一つの物語が重くて暗い

正体の分からない何かがあって、読んでいるうちに

それが自分の周りにねっとりと

まとわりついているような感じがします。

私は読み終わった後もしばらく、この感覚が抜けませんでした。

 

 

 

 

軽い気持ちで手に取った短編集でしたが、

1つの物語だけでもとても読みごたえがありました。

読んでいる間に物語のダークな世界観に

どっぷり浸かってしまい現実世界になかなか戻れないほどでした!

短編なので1つの物語もほんの数十ページですが

ズブズブ引き込まれ、まるで底なし沼のようです。

 

 

 

皆さんも読むときは、たかが短編と侮るなかれ、

読み始めたら作者が作り出したねっとりと

包み込むような不気味な雰囲気にたちまち

飲み込まれてしまいます。