本と映画とのんびりな日々。

大学3年生。読書と映画鑑賞が趣味。

本を読むひと

最近、図書室から借りてきた本をご紹介します。

 

 

 

本を読むひと (新潮クレスト・ブックス)

本を読むひと (新潮クレスト・ブックス)

 

 

パリ郊外の荒れ地に暮らすジプシーの大家族。家長のアンジェリーヌばあさん、息子五人、嫁四人、孫八人のこの一家を、ある図書館員が訪ねてくる。本を読む歓びを伝えたい一心で毎週通ってくる彼女は、まず子どもたちを、やがてその父母を、最後には家長をも変えてゆく。フェミナ賞最終候補となったフランスのロングセラー!

 

 

 

 

特にフランス文学が好きというわけでもないけど、
日本人作家の小説がとても少ないわが大学の図書館で
小説を読もうとなるとおのずと海外作家のひとのものになってしまいます。

 

本を選ぶときは、あらすじや書評があれば読んでみてその時の自分の気分に
本の雰囲気があっていたら借りています。 

 

 

 

 

 

 

目次

1.家族愛
2.ジプシーのフェミニスト
3.本の持つ力

 

 

 

 

 

 

1.ゆがんだ家族愛
図書館員エステールがジプシーの家族に毎週本を読み聞かせる、というのがお話の大きな流れです。
本を読み聞かせながら家族とかかわっていく中で、ジプシーの生活も垣間見えてきます。
ジプシーの家族は助け合いながら生きていますが、

お互いへの怒りや苛立ちを隠すようなことはしません。

妻や子供を殴る、蹴る、怒鳴ることは日常茶飯事。

特に、精神的におかしくなっているシモンは妻のへレナに容赦なく暴力をふるいます。ですが、家長のアンジェリーヌは、それを止めようとしません。

むしろ、妻に落ち度があると思おうとするのです。

アンジェリーヌは、ほかの色々なことにいても家族への愛情に満ちていますが、

この点だけは違和感を覚えました。

 

 

 

 

 

2.ジプシーのフェミニスト 

はっきりとフェミニストフェミニズムとは書いていませんが

このお話の中には一人とても勇気ある女性が出てきます。

先ほども少し触れた、シモンの妻エレナです。

ある日へレナはシモンの暴力に耐えかね、

娘たちを連れて家族の住む空き地から出ていくことを決めます。

ジプシーなので新しく生活を始めるためのお金はありません。

頼れるような人もおらず、これからどうするかも全く分からない。

そんな状況の中でも自分と子供の将来のことを考え、

行動を起こすへレナを見て私も勇気をもらいました。

DVを受けている女性がなぜ逃げないのか?という人がいます。

でも、DVを受けている女性は自分の可能性に気づくことや

自分に価値があることさえも気づくことができない人が多いです。

それだけ、DVによって心身共に壊されてしまうのです。

へレナも精神を病んだシモンに執拗な暴力を受けますが、

その中でも自分や子供のことを考え、行動を起こすということを一人で行いました。

これは、容易な事ではありません。

空き地を出た後のへレナは、職に就き子供たちを学校へ行かせられるようになります。自分で未来を切り開いていくへレナのパワーは、読んでいてとても勇気づけられました。

 

 

 

 

3.本の持つ力 

エステールが本を読み聞かせることによって、まずは子供たちに変化が現れます。

子供たちは本から新しい知識を得ることはもちろん、自分自身で考え、

意見を持つようになっていきます。

 今まできちんとした教育を受けたことのない子供たちが、学び、考えることを知る。

エステールが読んでいるのは子供向けのお話ばかりでしたが、

本の持つ力はほんとうにすごいと思いました。

 

 

 

 

 

『本を読むひと』は激しい起伏があるわけではないけれど、

力強さを感じるような作品でした。

他のフランスの作品では、モーパッサンの短編集しか読んだことがないのですが

どんな感じなんでしょう?

 

他のフランスの作品も読んでみたくなりました。

 

 

本を読むひと (新潮クレスト・ブックス)